タイランド湾を見て暮らす・パタヤコージーライフ

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タイの基礎知識

柿崎一郎著「タイの基礎知識」読了。
 同じ著者の中公新書「物語 タイの歴史」をナイトキャプ代わりに読んだのが1年ほど前。文字通り編年体的にタイの歴史を書いた本でしたが、近現代の項で、タイの政治家連中が、あまりにも利権をむさぼる政治屋的で読んでいられなくなり、読み止しになっています。
 この本を購入する際に、同じ著者の作品であることに気が付かず、また、表紙のみを見て「古そうな本だな、でもまあいいか」と思って購入。表紙はワットアルン暁の寺ですが、寺院の屋根が印刷ミスかのようにベタっとした質の悪い印刷のように見え、20年前の本かな、と思った次第。でも買ってから2016年発行の比較的新しい本だということが分かり、現政権の緒となった2014年のクーデタまでがフォローされているので、中身については古さを感じない本でした。
 基礎知識と銘打ってあり、タイについて横断的な記載が続きますが、タイ初心者が読むには歯ごたえがありすぎだと思います。ある程度の予備知識があり、これらを深耕させたいと思う人たち向けの本だと思います。

 面白い、ためになったと思うこと、たくさんありますが、『カンボジアとの国境紛争』を特に挙げると、


 1900年代初頭、フランス統治下にあったカンボジアとの間で国境が画定しました。文言的にはパノムドンラック山脈では分水嶺を国境としましたが、のちにフランス技師により作成された付属地図では分水嶺を越えてタイ側に食い込む形で記載されていたのがそもそもの発端。
 何もない不毛な土地であれば大きな問題にもならなかったのでしょうが、プレアビヒア(カンボジア名称)遺跡が国境線付近にあり両国の紛争の元になっており、1962年国際司法裁判所にてカンボジア側との判決が出ました。そして、カンボジア和平が実現した90年代以降、遺跡観光地として有名になりましたが、当時はタイ側からしかアクセスできなかったことから、タイ側の地元シーサケット県の貴重な観光収入源になっていました。
 2008年には世界遺産に登録されました。この際、タイは、領土問題を切り離して世界遺産化に賛成するとしました。
 しかしその後、タイ国内の政権反対勢力側から反発があり、国際問題でありながら国内の政争の具になり、また2011年にタイ軍とカンボジア軍の軍事衝突があり、さらに大きな両国間の問題に進展、、、。
 タイ側の事情としては、分水嶺より北側(タイ側)に食い込んで地図上に記載されている箇所が多数あり、ここで譲ってしまうと多くの国土を失ってしまうということがあるようです。

 現在、プレアビヒアはカンボジア側からの道路(国道62号)が整備され、アンコールワットからの日帰り旅行先としてにぎわっており、逆に、タイ・シーサケット県からの出入りは封鎖され、遺跡の一部カオ・プラウィハーン(タイ側の名称)に立ち入れるだけとなっています。、、、でもgoogle地図を見るとカンボジア国道62号も、最後のカーブでタイ側に食い込んでいるようにも見えます。


その他、タイの地方統治制度や民族分布など、たくさんの「なるほど」がありましたが、別の機会にでも。