権十郎の芝居
岡本綺堂の作に三浦老人昔話というシリーズがあり、この中に「権十郎の芝居」があります。
今の河原崎権十郎は4代目ですが、この権十郎は初代の権十郎のようで、後の9代目市川團十郎のようです。
芝居狂いの御家人がいて、武士が芝居を見に行くのは身分からしてあまり好ましくないと言われた時代でも、熱心に芝居見物に通っていました。
贔屓の役者がいる反面、権十郎とは好みが合わず、「大根役者だ」と芝居の最中に嘯いてしまう。これを耳咎めて町人と争うこととなり、芝居の帰りこの町人たちを切り殺してしまう,,,
江戸から明治に変わる際、この武士は彰義隊に入り総攻撃の前の晩、芝居を見に行って、毛嫌いしていた権十郎の芝居が見違えるほどよくなっていて、自分の目は節穴だった,,,と悔悟するという内容。
一編の最後、
「河原崎権十郎は後に日本一の名優市川團十郎になりました」という言葉で結ばれています。
9代目市川團十郎は荒唐無稽の内容が多い歌舞伎を明治維新の風潮に合わせて時代考証を重ねた「活歴」という芸術活動を行ったのですが、これが芝居の面白さを欠くものであったため、芝居興行的には不入りだったとのこと。
こういったものを下敷きにして「大根役者」という内容が出来たのかな、とも。
調べると圓生に「権十郎の芝居」という落語があり、原作は岡本綺堂だそうで芝居仕立てにしていますが、圓生らしい落語になっています。
私自身、歌舞伎の面白さを学んだのは3代目河原崎権十郎からで、惜しいことに1998年に亡くなってしまいました。
【朗読】岡本綺堂 「権十郎の芝居」三浦老人昔話⑥ 朗読・あべよしみ
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