タイランド湾を見て暮らす・パタヤコージーライフ

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利他的な遺伝子 or 利己的な遺伝子

 先ほど、筑波大学名誉教授 柳澤先生の「利他的な遺伝子」読了。


 この本を論評する前に、まず「利己的な遺伝子」のお話を少々。

【ロングセラーを読む】利他的な行動の謎に挑む リチャード・ドーキンス著「利己的な遺伝子」 - 産経ニュース


 曰く「利己的に行動すべき生物が利他的な行動をするのはなぜか」とか、「生物は遺伝子に利用される乗り物に過ぎない」など読み手を誘う文章があり、生物学書としては驚異的なロングセラーとの謳い文句。


 本当はこの本を買おうと思ったのですが、見た目分厚い本であり、この表紙の赤い40周年記念本で約3000円、増補新装版で5000円する大著。
 BookOffで検索すると、表記の「利他的な遺伝子」が千円少々で古本があり、買いたい本は利己的、こちらは利他的。


 高校で生物を履修した以上の生物学の知識は多く持ち合わせないながら、生物は利己的、本能的に振舞うのが普通だよな、と思うわけです。
 だからこそそういう通念を打ち破って、「利己的に行動すべき生物が利他的な行動をする」とする40年近くベストセラー状態のドーキンスさんの本があるわけで、本の表題は利他と利己と正反対になっていますが、多分同じ内容なんだろう、、、、と推測し、柳澤先生の「利他的遺伝子」古本で1000円を買ったわけです。


 柳澤先生は日本エッセイスト・クラブ大賞を受賞された世に認められた書き手。
 その先生が脳の仕組みから脳内物質、ホルモン、遺伝子、、、を説明された本が、「利他的な遺伝子」でした。利他的な遺伝子が出てくるのは最終章で、曰く、
++ 生物の行動は利己的である。この意味は自分の子孫を残すということを第一にするもの。生物学で利他的とは自分の生殖機会を減らす行動をいい、一般通念とはいささか異なる。
++ 動物個々では利己的であっても、人間のように高度に集団生活を営む動物(大型哺乳類、類人猿)では、自分にとって得とならない、利他的な行動を示す例がまま見受けられる。ここで利他的とは上記の生物学的な意味での利他的ではなく、人間的な感覚で議論される利他的という意味である。
++ 集団生活を営むことにより、その集団の成員を守る、集団を維持するという利他的な行為が善とされ、それが本能のように生得され遺伝子のようにふるまい、利他的な行動を引き起こしているのではないか、、、と。


 結局、内容的にはドーキンスさんの本とは多分全く違った切り口で、利他的な遺伝子を解説されている本でした。「生物は遺伝子に利用される乗り物に過ぎない」みたいな文言は出てきませんでしたが、でもまあ、わかりやすく、現代脳科学をさらっと説明された良書だと思います。


 先生のご専門は遺伝学。
 「頭の良さ」は遺伝するか?
 「キレる若者」は遺伝なのか?
 「三歳児神話」は正か?
 この辺りの解説は非常にわかりやすく書かれていました。