タイランド湾を見て暮らす・パタヤコージーライフ

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ドイツの巨匠による不滅の音楽

https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/treatise/treatise_107/each/06.pdf


 日本国から研究費を貰って研究された論文。この方、日大法学部の先生。
 随分と久しぶりに「学術論文」を通読しました。


 ナチスドイツが終焉を迎えるほぼ1年間、ベルリンが陥落する2週間前までラジオ放送で流された音楽番組である「ドイツの巨匠による不滅の音楽」。
 プログラムや演奏された音楽の原盤、そしてこれがよくわからないのですが番組編成会議の議事録が残っています。また番組を立ち上げた宣伝省大臣ゲッペルスの口述日記があり、この論文では議事録と日記に沿ってこの音楽番組がドイツの国策としてどう作られていったかを解明しています。


 ひとことで言えば国威発揚なのですが、音楽番組そのものは純粋にドイツ音楽を不滅のものとして残すという文化事業として作られていました。


 音楽録音は、フルトヴェングラーの指揮以外はほぼすべてスタジオ録音されたようです。
 音源そのものもハイクオリティのものを追求するという主旨です。
 演奏会録音だと演奏のばらつきがありますし、咳とかの雑音も入りますので。


 ゲッペルスは番組構成についても自分の意見を通そうとしたようです。正月はリストのきらびやかな音楽を聴きたい、、、と。ただし演奏音楽の選択は最終的にはプロデューサが決していたようで、この時はブラームスの交響曲が選ばれたようです。


 ゲッペルスの音楽趣味も論文では紹介されていて、
 バッハ:歴史的価値には配慮するものの音楽が古い
 ベートーヴェン:ドイツを代表する音楽であり、何よりもよい
 ブラームス:暗い、聴く気がしない
 ブルックナー:理解できない
 ゲッペルス自身、自分を熱心な音楽愛好者と考えていたようですが、音楽の趣味的にはミーハーだなと私は思ってしまいます。


 ラジオ放送なのでヒトラーも聴いていたようで、ゲッペルスの日記にはヒトラーの感想も記述されています、、、陶酔という感じですね。


 音楽ファン的に言えば、結果として非常に良質な音源が後世に残り、歴史/政治的経緯を経て、現代に生きる私たちがその音楽を享受できるので、よき文化事業であったと思うばかりです。