タイランド湾を見て暮らす・パタヤコージーライフ

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タイ国内旅行 20 チャイニャート行 ㉕

 Noi川に架かる鋼製トラス橋編。その3。
 いつもマニアックな写真ですが、今日は殊の外、マニアックになってしまいます。
 
 まず、前回、前々回とパターン①とパターン②と分けて紹介しましたが、その答え合わせ。パターン①は歩道/バイク専用橋、パターン②は自動車も走行可能な橋梁でした。


 現地では当然、標識等があったりしますので、それなりにわかるのですが、橋の形を見てもわかります。トラスの形状とか、取付部の道路勾配とか、道路の幅員などで、現地で見ればわかります。ただし、今回の場合、写真だけで分かったどうか、わかった人がいたらプロです、、、保証します。

 これはトラス橋端部、上弦材を見たところです。
 コの字の形をした溝型鋼を背合わせにして、さらに1枚の板(ガセットプレート)を挟んでいます。
 歩道/バイク専用橋は、自動車橋梁に比べると荷重が小さいので、部材も小さく抑えられ、結局、小さな溝形鋼2本を背合わせにした断面程度でOKのようです。

 最初の写真でガセットプレートを挟んでいると述べましたが、上記が、中間部格点での状況です。
 溝型鋼を背合わせにしていますが、実際にはガセットプレートを挟み込んでいるので、格点部以外では隙間が空いていることがわかります。
 この写真を見て、問題だな~と思う点が3つあります。
① ガセットプレートを上弦材の真ん中に挟んでいるので、斜材と鉛直材が、上弦材に対して偏心して配置されています。一般的には軸心が合うように、同じ平面内で力がかかるようにします。
② 上記①に関連して、斜材と鉛直材は、外側の溝形鋼の下フランジに溶接され、結果としてフランジを押し込むようになっています。この押し込み力に対する補強が、溝形鋼側で行われていません(次の写真で見てください)
③ 溝形鋼は背合わせですが隙間が空いています。トラスの上弦材は圧縮力を受ける部材ですが、2組の溝形鋼はこの圧縮力に協働して抵抗せず、一枚ごとに抵抗するので、座屈(軸方向に押し曲げられる)に弱い形になっています。

前記②の説明写真です。下からくる斜材鉛直材の押し込み力は溝形鋼の下フランジを上側に押し込みますが、フランジそのものは薄っぺらい部材なので、変形してしまうだけです。本来なら、下フランジを補強する「補剛材」を設置して、力の流れをよくする必要があります。

あくまでも相対的なので、見慣れないとわからないかもしれませんが、全体的に華奢にできています。

こちらは自動車橋の端部です。トラス上弦材は断面の大きなH型鋼が使わています。
 また鉛直材斜材の部材中心とH鋼の中心があっています。同一平面内に部材があることになり、捩じれたりすることはなくなります。
 ただしこの場合も、鉛直材側に問題があります。鉛直材はコの字型の溝形鋼を向かい合わせてロの字にしていますが、部分的にしか溶接していません。ですから見た目はロの字型でも、構造的にはコの字が向かい合った形にしかなっておらず、座屈に弱い形になっています。
 また、隙間が空いていますから水がどんどん浸入します。部材の外側は塗装していますが、部材内部は塗装しませんので、水でどんどん錆びていくだけです。

 トラス上弦材にH鋼を使っていますが、この橋梁の場合、ガセットプレートを下フランジ端部に溶接付けして、これに鉛直材斜材が取り付いています。
 見てわかりますよね、下から突き上げるような力がかかった時、H鋼の薄っぺらい下フランジが変形するだけです。活荷重(自動車)が通過するたびに、ゴキゴキと下フランジが変形するわけです。普通に考えれば壊れますね。

黄色い部材は鉛直材です。下から力が突き上げるようにかかる構造ですが、「台座」を設けて力の分散を図っています。、、、まあ工夫はしています。ただし、この台座、一般にはカバープレートという構造で、自動車荷重のような繰り返し荷重に弱いとされています。多分そんなことは考えずに、見た目の安心感でこのようにしたのでしょうが、正解だったかどうか?

 構造物部材は部材の芯を合わせることが何より肝要です。橋にはいろんな部材がありますが、弦材でこれをやってはね。
 見た目、ものすごくずれていますね。「救いようのない」精度管理ですね。

これも、とりあえず溶接で付けたというだけです。溶接の裏側を見ていませんが、裏側も同じ程度だとすると、部材断面はここで半分くらいでしょうか?

この写真、鋼トラス桁と橋脚の接点の写真です。橋桁が移動しないようガッシリと固定しています。ここでは水平行方向に動くこともできないし桁の回転も拘束されています。
 橋桁は温度で伸び縮し、車が乗ると撓みます。このため一般的には、桁とコンクリートの間にゴムを敷くなど、ある程度の変形や移動を許す形します。

この写真も同様に、桁の移動を拘束しています。丸ッとコンクリートで桁を包み込んでしまっています。日本でもこういうことしますけど、鋼桁から鉄筋を出して確実にコンクリートと一体化させないと、コンクリートが割れ落ちたり、剥がれて水が浸入したりします…まあこれを見る限り、考えた形跡はあまり見られませんね。