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ベテルギウス大増光

 オリオン座の主星ベテルギウスは赤色超巨星という分類に属する恒星で、大きく変光する星として有名です。

 上図は2019年~2023年でのベテルギウスの高度を示したグラフで、2019年12月に大きく光度が暗くなりました(グラフで下の方向に窪んでいます)。


 天文学者の見解としては、
・大減光直前に、ベテルギウス本体から内部物質の大噴出が見られた
・噴出ガスが塵となってベテルギウス表面を覆ってベテルギウス本体の光が遮られた
 というものでした。
 その後、ガスや塵は遠く逸散して、本来の明るさを取り戻し、ある程度の周期性を持つ変光星として現在に至りますが、よく見ると増光したり減光したり波打ちながらも、若干、明るめに推移しているように見えます。

 この図は冒頭の図の一番右側、ここ300日間のベテルギウス光度の観測結果です。右端で数値が飛び上がっています。
 英語の解説には「通常光度の1.56倍」とあります。ここでいう「通常光度」はこのSNS主が観測している限りでの平均値のようで絶対的なものではありませんが、ともあれここ数日「大増光中」ではあるようです。


 太陽や太陽より重い恒星は、寿命の最終段階で「赤色巨星」という赤く膨らんだ星になります。太陽の場合だと地球の内側を廻る火星の軌道くらいまで膨らみ、地球は熱せられて赤い火の玉になるというのが現在の定説です。
 太陽の場合は質量が小さいので赤く膨らむだけで、最終段階で太陽内部の核融合反応が停止し、ゆっくりとガスを放出して白色矮星という非常に小さな暗い星になって終焉を迎えるというシナリオになります。


 これに対して太陽質量の8倍を超える恒星の場合、ベテルギウスは太陽質量の19倍で赤色超巨星という分類になります。この場合は恒星内部で水素⇒ヘリウム⇒炭素⇒酸素⇒ネオンマグネシウム⇒鉄と核融合反応が進み、鉄で核融合反応は停止します。
 それまでは核融合で外側に爆発しようとする力と重力が釣り合っていたものが、核融合反応が停止するために重力に対抗する力がなくなり急速に恒星は縮んでいきます。
 核融合で生じた鉄は押縮められることにより電子を取り込んで中性子に変わりますが、中性子には縮退圧というこれ以上は縮まらない状態があり、この縮退圧状態に達すると重力に打ち勝って外側に急反発します、、、これが超新星爆発です。


 従来の定説だと、超新星爆発に至る前、爆発の瞬間まで比較的穏やかであるというものでした。

 ところがパンスター衛星により2020年夏に発見された1億2千万年遠方の銀河うしかい座NGC5731にある星は、放射線とガスを噴出している星として発見され、その後観測を続けていたところ、発見の130日後に超新星爆発を起こしSN2020tlf(SNは超新星:スーパーノバ)と名付けられました。この星は太陽質量の10倍の赤色超巨星であったことも確認されています。この観測結果では超新星爆発をする直前、赤色超巨星には大きな変化が現れるということを示しています。


 ちなみに水素がヘリウムになる核融合反応は、太陽の場合だと数十億年~100億年という時間がかかります。寿命もほぼ100億年といわれています。
 これに対してベテルギウスのような太陽質量19倍の恒星だと、星全体の寿命が1000万年程度で、各段階の核融合反応は順次早く進行し、最後の段階、鉄に変わる核融合は1日程度で完了します。


 3年半前の大減光、そして今回の大増光。
 天文学者の間では、ベテルギウスの超新星爆発は10万年~100万年後とされていますが、今回の大増光でこれが前倒しされるのかどうか、ベテルギウスの姿を見たいと思っているのですが、最近の曇り空でオリオン座が見えないパタヤではあります。