AI越えの妙手
先ごろ行われた叡王戦第四局千日手指し直しで、藤井叡王の指した2九龍に対して、当日中継していたABEMAの将棋AIが藤井叡王が指した直後、マイナス評価値を示して藤井叡王の悪手であると判定。
その後すぐに勝率=99%になり、23手詰めで藤井叡王の勝利と再判定。
将棋界隈ではAI越えの妙手と騒がれました。
「棋神アナリティクス」という最新将棋AIソフトをクラウド上で提供している方の投稿。
将棋AIにはdl系(ディープラーニング)とNNUE系のソフトがあり、数年前までは後者が最強でしたが、ここ1-2年でdl系追いつき追いしで、dl系がNNUEを上回るようになり、「棋神アナリティクス」はdl系のソフトです。
ABEMAが藤井叡王の詰みを発見できなかった、
dl系は詰みがわかったがNNUE系は詰み発見が遅かった、、、など、
ソフトの優劣の議論になっていて、真のところがわかりずらい議論がSNSで展開されていました。
いろいろなところの論旨を整理すると
① NNUE系のAIはCPUを使って検討していて、飛車角などの大駒を王手で切るような手筋は持ち駒の浪費に近いので、「枝切り」と称して検討を後回しにしている。大駒を相手に渡す手順より、次善手になるかもしれないが確実な勝ち筋を探っていく手法を取っている。
② dl系のAIはGPUを使って検討している。従来のdl系では大局観では優れているが、詰み筋発見はNNUEに劣るとされていた。dl系のCPUは遊んだ状態になっているため、最近のdl系は、別途詰み手順探索システムを組み込んでいてCPUで検討させているソフトもある。
よって結果的に積み筋発見では、dl系の方がNNUE系に勝るものも出てきている。
ということのようです。
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将棋AIソフト開発者としては、将棋AI同士で戦い合って最強のソフトになることが一つの目標なので、最小手筋で勝つ詰将棋よりも、確実に相手を倒す手筋を探索する方向に向かうのは当たり前のこと。
しかし現実の将棋愛好家は藤井六冠の対局を中心に放映するABEMAを観て楽しんでいるわけであり、いかに勝つための手を指すかということもさることながら、1分将棋で竜を捨てる王手から始まる23手詰めの妙手を楽しんでいるわけで、将棋AIがその詰み筋を発見できなければ、「AI越えの妙手」と称えるわけです。
ABEMAの将棋AIが積み筋優先で探して藤井六冠より先に示すよりも、2九龍が指された段階で一旦は悪手判定して、その後AIが反省して23手詰めであると判定した方が、話題にもなるわけです。実際の将棋AI開発者がどう考えてシステムを考えているか興味深いところではあります。
世の中、AI全盛なのですが、AIにも様々なシステムがあり、またどんなデータを与えて学習させたかによっても答えが変わってくるので、AIが示しているからと盲信するのは禁物、開発者の思惑が反映していることを忘れてはならないということでしょうか。
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